財布・スマホ・ポーチの実寸から中身収容を前提とした内寸設計を行う

内寸設計の出発点は、想定する中身の実寸を並べることです。長財布、二つ折り財布、スマホ、化粧ポーチ、キーケース。このうち一番大きいものではなく、同時に入れたときの組み合わせで下限が決まります。長財布とスマホを横に並べるのか、縦に重ねるのかで、必要な底面積もマチも変わってくるからです。
当社工場では、企画側から「長財布とスマホとポーチが入るサイズ感」と言われた時点で、まず中身の実寸リストの提出をお願いしています。「長財布」とだけお伝えいただいても、型によって厚みが異なるため、内寸を確定することはできません。たとえば、同じ長財布でも、ファスナー付きで厚みのあるものと、薄型のものでは、マチの必要量が変わります。スマホもケースの有無で外周寸法が変わるため、ケース込みの実寸で確認します。
内寸設計は、以下の順で行います:①中身の最大幅・高さ・厚みを実測、②同時収納する組み合わせを明確化、③出し入れ動作を想定した余裕寸法の付与、④素材厚みと縫い代を差し引いた有効寸法の確認。
- 中身の最大幅・最大高さ・最大厚みを実測する
- 同時収納する組み合わせを決める(財布+スマホ+ポーチ、など)
- 出し入れの動作を想定し、指を入れる余裕を寸法に加える
- 内装の縫い代と裏地の厚みを差し引いた有効寸法を確認する
ここで注意するのは、外寸ではなく内寸で設計することです。革や合皮、芯材の厚みによって、外寸が同じでも内寸は変わります。量産に入る前に、使用する素材の厚みを反映した内寸を図面に落とし、サンプルで確認する流れにしています。
マチ幅の収容性とシルエットへの影響を設計基準に沿って調整する

マチ幅は、収納力とシルエットのどちらを優先するかで決まります。マチを広くすれば中身は入れやすいですが、バッグ全体が膨らみ、持ったときの印象が重くなります。逆にマチを狭くすると、すっきりした形にはなりますが、長財布の厚みで開口が引っ張られ、ファスナーが閉めにくくなることがあります。
当社工場では、マチ幅の候補を出すときに、中身の厚みの合計と、バッグの底形状をセットで確認します。底が一枚革で平らな場合と、底に別パーツを付ける場合では、同じマチ幅でも立ち上がりの形状が変わります。底パーツを入れると角が立ち、内寸が確保しやすくなりますが、縫製工程が一つ増えます。マチの付け方も、底で折り返す方式と、側面に別マチを縫い付ける方式があり、素材の厚みや硬さによって選びます。
比較の観点を整理すると、次のようになります。
| 確認項目 | マチ幅が広い場合 | マチ幅が狭い場合 |
|---|---|---|
| 収納のしやすさ | 中身を入れやすく、出し入れの余裕が出る | 中身が開口を押し広げ、出し入れに力が要る |
| シルエット | 膨らみが出て、カジュアルな印象になる | すっきりした形を保ちやすい |
| 長財布との相性 | 厚みのある財布も収まりやすい | 財布の角が内側に当たり、型崩れの原因になる |
| 縫製の難易度 | マチの縫い合わせが長くなり、工程が増える | 縫い合わせは短いが、返し口の処理に注意が要る |
マチ幅の最終判断は、サンプルに実際の中身を入れて、開口の開き具合とシルエットの両方を見てから決めます。図面上の寸法だけで決めず、中身を入れた状態での確認を必ず挟みます。
開口方式(ファスナー/がま口)と内寸を統合的に仕様化する

開口の形は、内寸以上に使い勝手を左右します。ファスナー開口は、閉めたときの安心感があり、中身が飛び出しにくいのが利点です。一方、がま口開口は、開けたときに中が大きく見え、出し入れがしやすい反面、口金の構造上、開口幅が口金の長さで決まります。
当社工場では、開口を選ぶときに、バッグの内寸と口金のサイズを先に照合します。がま口の場合、口金の内側寸法がそのまま出し入れの通り道になるため、長財布が口金の開口を斜めに通るかどうかを確認します。口金の幅が財布の対角線より小さいと、入れるときに引っかかります。ファスナーの場合は、ファスナーの長さと、マチを開いたときの開口幅の関係を見ます。ファスナーが短いと、マチがあっても開口が狭く、中身の出し入れがしにくくなります。
選び方の目安は次の通りです。
- 中身を頻繁に出し入れするなら、開口が広く取れる形を優先する
- 移動中に中身が飛び出すのが心配なら、ファスナーで閉じられる形を選ぶ
- がま口は口金の内寸を先に確認し、財布の対角線が通るかを確かめる
- ファスナーはマチを開いた状態での開口幅をサンプルで確認する
開口の金具は、量産前に必ず実物を手配して、中身の出し入れを試します。口金の開閉が硬い、ファスナーの引き手が小さい、といった問題は、図面では分かりません。サンプル段階で金具の操作感まで確認しておくと、量産後のクレームを減らせます。
内ポケットの位置とサイズを財布・スマホの出し入れから設計する

内ポケットは、付ければ便利というものではなく、何を入れるかで位置とサイズが決まります。スマホを入れるポケットなら、スマホの実寸に指を入れる余裕を加えたサイズにし、バッグの開口から手が自然に届く位置に付けます。財布を入れるポケットなら、財布の厚みを考慮し、ポケットの深さを財布の高さより浅くしすぎないようにします。
当社工場では、内ポケットの設計時に、バッグを持った状態での手の動きを想定します。肩にかけた状態で、利き手が開口からまっすぐ入る位置にスマホポケットがあるか、ポケットの口が開きやすい向きか、を確認します。ポケットの口が下向きに付いていると、中身が落ちやすくなります。ポケットの口元にマグネットやファスナーを付けるかどうかも、中身の出し入れ頻度で決めます。
内ポケットの確認点は次の通りです。
- スマホポケットは、スマホの実寸+指の入る余裕でサイズを決める
- ポケットの口は、手が自然に届く向きと高さに付ける
- 財布用ポケットは、財布の厚みでポケットの深さと幅を確認する
- ポケットの口元に留め具を付けるかは、中身の出し入れ頻度で判断する
内ポケットの縫製は、表地と裏地の間に縫い込むため、位置がずれると修正が効きにくい部分です。量産前に、ポケット位置を図面と照合し、サンプルで実際にスマホと財布を入れて確認します。
サンプル確認時に内寸・開口・内ポケットをどう検品するか
サンプルが上がってきたら、図面の寸法と実物を照合するだけでなく、実際の使用を想定した確認をします。当社工場では、サンプル検品のときに、中身の実物を用意して、出し入れの動作を再現します。寸法が合っていても、出し入れのときに引っかかる、開口が狭くて中が見えない、といった問題は、動作確認でしか見つかりません。
検品の流れは、次の順で行います。
- 内寸を測る:底幅・底マチ・高さを、縫い代を避けた有効寸法で確認する
- 中身を入れる:想定する財布・スマホ・ポーチを実際に入れ、出し入れする
- 開口を確認する:ファスナーなら開閉の滑らかさ、がま口なら口金の開き具合を見る
- 内ポケットを確認する:スマホと財布を入れ、位置とサイズ、口の向きを確かめる
- シルエットを確認する:中身を入れた状態で、バッグの形が崩れないかを見る
検品の記録は、次の表のような形式で残すと、量産時の基準になります。表は空欄のまま使えるようにしています。
| 確認項目 | 確認方法 | 判定基準 | サンプル結果 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 内寸(底幅) | ||||
| 内寸(底マチ) | ||||
| 内寸(高さ) | ||||
| 開口の開閉 | ||||
| 内ポケット位置 | ||||
| 中身の出し入れ |
判定基準は、仕様書と承認サンプルで決めます。寸法の許容差も、素材の伸縮や縫製の特性を踏まえて、事前に合意しておきます。サンプルで問題が見つかった場合は、修正箇所を図面に反映し、再サンプルで確認してから量産に入ります。
内寸設計の再現性を阻む3つの要因と現場対策
バッグの内寸設計で量産後に問題が起きる場合、サンプル確認での見落としが原因であることが多いです。当社工場でよくあるのは、次の三つです。
中身の実寸のずれが起きるケースです。企画側が想定する財布と、工場がサンプル確認に使う財布が違うと、内寸の判定がずれます。これを防ぐため、当社工場では、サンプル確認に使う中身の実物を企画側から送ってもらうか、実寸リストを共有してもらいます。中身が手元にない場合は、寸法を図面に明記し、どの財布を基準にするかを決めてから進めます。
素材の厚みによる内寸の縮小が起きるケースです。革や合皮は、縫い合わせると縫い代が内側に折れ込み、有効寸法が減ります。当社工場では、素材の厚みと縫い代を差し引いた有効寸法を図面に記載し、サンプルで実測して確認します。素材が変わると内寸も変わるため、素材変更の際は必ず再確認します。
開口金具とのバランスが取れていないケースです。がま口の口金が小さいのにマチを広く取ると、中は広いのに出し入れがしにくいバッグになります。当社工場では、口金の内寸とバッグの内寸を先に照合し、口金のサイズに合ったマチ幅を提案します。ファスナーの場合も、ファスナーの長さとマチの開き具合をサンプルで確認し、必要ならファスナーの長さを調整します。
これらの問題は、サンプル段階で中身を入れた動作確認をすれば、ほとんど防げます。当社工場では、量産前に必ずこの確認を挟み、問題があれば修正してから量産に入るようにしています。
よくある質問
内寸の下限はどうやって決めればいいですか?
想定する中身の実寸を測り、同時に入れる組み合わせで決めます。財布・スマホ・ポーチの最大幅と厚みを並べ、出し入れの余裕を加えた寸法を内寸の下限にします。素材の厚みと縫い代を差し引いた有効寸法で確認してください。
マチ幅は何センチが使いやすいですか?
中身の厚みとシルエットの優先度で変わります。厚みのある長財布を入れるなら、財布の厚みに余裕を加えたマチが必要です。すっきりした形を優先するなら、マチを狭くし、中身の組み合わせを絞るのが現実的です。サンプルに中身を入れて確認してから決めます。
ファスナー開口とがま口開口はどちらが使いやすいですか?
中身の出し入れ頻度と、閉めたときの安心感のどちらを優先するかで選びます。がま口は開けたときに中が見やすく、出し入れがしやすい反面、口金の内寸で開口が決まります。ファスナーは閉じたときの安心感がありますが、ファスナーの長さとマチの開き具合を確認する必要があります。
内ポケットの位置はどうやって決めますか?
何を入れるかで決めます。スマホを入れるなら、バッグを持った状態で手が自然に届く位置に、スマホの実寸+指の余裕でサイズを決めます。財布を入れるなら、財布の厚みと高さを考慮し、ポケットの深さを確認します。ポケットの口の向きも、中身が落ちない向きにします。
サンプル確認ではどこを見ればいいですか?
内寸の実測、中身を入れた出し入れ、開口の開閉、内ポケットの位置とサイズ、中身を入れた状態でのシルエットを確認します。寸法が合っていても、動作確認で引っかかる、開口が狭い、といった問題が見つかることがあります。判定基準は仕様書と承認サンプルで決めます。
素材を変えると内寸も変わりますか?
変わります。革や合皮の厚み、芯材の有無によって、外寸が同じでも内寸は変わります。素材を変更する場合は、有効寸法を再計算し、サンプルで実測して確認してください。縫い代の折り込み方でも内寸が変わるため、素材変更の際は必ず再確認します。
内寸設計の相談から量産まで
レディースハンドバッグの内寸・マチ・開口・内ポケットの設計は、中身の実寸と使い方の想定が揃えば、仕様化の精度が上がります。当社工場では、企画段階の相談から、図面の作成、サンプル確認、量産、検品までを一貫して対応しています。レディースアパレルOEMの小ロット対応と同様に、バッグでも仕様の整理から進められます。
内寸設計の進め方や、サンプル確認の基準について相談したい方は、無料のオンライン相談をご利用ください。SKU、仕様書、承認サンプル、許容差の合意、ラベル、包装、検品レポートの要否など、お手持ちの情報を共有いただければ、中国の生産ネットワークと生産現場の知見を踏まえた提案をお送りします。